▼少女はいつも手に本を持っていた。だが,本を開いて,読んでいる彼女をみることはついぞなかった。「本を開くなんて,そんなこわいことはできません。そのまま閉じこめられてしまいそう。だから,本は開かずにいつも持ち歩くものなんです。胸の中に,いつも孤独を抱えるように」。
quote:小さな女の子がバスのなかで本を読んでいた。唇を動かしながらページに目を走らせ,隣の女性にしょっちゅう単語の読み方を聞き,そして微笑を浮かべていた。ハイテク化の進む世の中で,年に1度は本の贈り物を考えていただきたい。マーキュリー・ニューズ社では,子どもに本を送るプログラムを実施している。
▼絶望と孤独の毎日だった。希望を避け,人を避け,そんな毎日を過ごしていた。本はいつも読んでいたが,本が絶望と孤独をなぐさめてくれることはなかった。当たり前だ。本のなかの希望は現実ではなんの役にも立たないし,本のなかで誰かと話し込むこともない。だが,人は絶望と孤独をおそれるものだが,ときにそれを求めもする。だから本は,多くの人に読まれる。そしてわたしは,本を愛し,本に恋をし,そして絶望と孤独の毎日を過ごし続けた。
▼コンピュータと本は,以前は親戚同士だったが,コンピュータが必ずネットワークと手を取るようになって,お互いはまったく赤の他人になった。いや,他人どころか,もしかしたらいまは憎しみ合っているかもしれない。本のなかに現実はない。だがネットワークの向こうには現実がある。いや,ネットワーク自体がもう現実となった。家出した少年にとって,本はあまりにも寂しすぎるが,ネットワークは心をいやしてくれる。コンピュータはネットワークによって別人になった。だからわたしは望む。本とネットワークの融合を。それは,果たしてどんな潤いを社会に注いでくれるだろうか。もうわたしの頭にはネットワーク・ブックのカタチがみえてきている。遠い未来の話ではなく,あしたにでも,それはみんなの手元に届くだろう。あなたにも,その姿がみえるはずだ。
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